JOBS & STUDY

音楽・芸能といったエンターテインメント業界で働く人たちに、本音で自身の仕事について語ってもらおうというのが、当企画。 第2回目は、スタジオでのリハーサルやライブ会場などで、音を細かく設定し、アーティストを根元から支える仕事、PA篇。 インタビューに応じてくれたのは、サウンドクルー所属の佐藤希実枝さん。 エンタメに関わる仕事に興味を持っている方は必見です!

会社の先輩もお客さんも体育会系というか、すごくノリが良くて、真面目な話の中でもちょっとしたジョークを交えてきたりして面白いですし、スタジオを担当している事で、いろんな会社の人たちと仲良くなれる事が楽しいです。

――どういうお仕事をしているのですか?
佐藤:プロ・ユースのリハーサルスタジオの技術スタッフとブッキングという仕事をしています。
――その中で、役割は細かく分担化されているのですか?
佐藤:私はスタジオ部という部署に配属されていて、その中はリハーサルの音響技術者、レコーディングのアシスタント・エンジニア、スタジオの予約を埋めるブッキングという3つのセクションからなっているんですが、部員はそれぞれの分野をやりつつ、スタジオの運営はみんなで助け合ってやっている感じです。
――分担があっても、みんなでやることもあるんですね。
佐藤:接客業なので、お客さんへの対応などはセクションごとの垣根はなく、みんなでやって、技術系に関しては技術の対応者の人がやっています。
――アーティストの方とのつながりや交流はあるのですか?
佐藤:アーティストの方よりは、スタッフさんと仲良くなることが多いです。でも、スタジオでアーティストの方との交流もありますね。比率的にはスタッフさんのほうが多いです。
――メインの作業がない時は、何をやっているのですか?
佐藤:常設機材のメンテナンスだったり、普段できないようなところの掃除をして、いつお客さんが来ても完璧な状態で迎えられるように、スタジオの中をきれいにしています。
――アーティストのツアーに同行したりするんですか?
佐藤:スタジオのスタッフは同行しませんね。
――PAになろうと思ったきっかけは何ですか?
佐藤:高校生の時に軽音楽部に入っていて、部活内で楽器担当、照明担当、PA担当の人がいて、その中で私はPA担当をやっていたんですが、そこで音をいじって、これは楽しいなと思ったのがきっかけですね。
機材は高校にあるようなものなので、16チャンネルのアナログ卓とかでしたが。
――部活がきっかけになったのですね。
佐藤:そうですね。そこから、じゃあ専門学校に行って、ちゃんと勉強してPAになろうと思いました。
――そう思ったのは、高校の何年生の時ですか?
佐藤:高校2年生くらいの時にはそっちの道もいいなって思い、この道に歩き始めた感じです。
――就業時間はどうなっていますか?
佐藤:リハーサル・スタジオは、朝10時から夜10時までの12時間のロック・アウト(立ち入りを制限)というシステムになっていて、その時間中は必ずスタッフがリハーサル・スタジオにいるようにしているんです。ただ、ひとりが丸一日拘束だと、とても間が長くなってしまうので、基本的に朝番の人、夜番の人でシフト制になっています。
――睡眠はとれていますか?
佐藤:例えば、今日朝番で明日も同じだとよく寝られるんですが、夜番から朝番だと3時間くらいしか寝られない日もありますね。けっこう、バラバラです。
――PAをやっていて辛かったことはありますか?
佐藤:先輩に大目玉を食らった時ですね(笑)。お客さんがいらっしゃったら仕込みを手伝うんですが、一度わかりにくいところの結線を間違えてしまって、20分くらいみんなで間違えたところを探す事になっちゃって、あとから先輩に怒られました(笑)。
――チームでやるっていうのは大変ですね。
佐藤:そうですね。それからはPAさんに、私ここやりましたよって言うようにしています。私はそのチームのメンバーではなく、リハーサルの仕込みを手伝っているだけなので、自分が仕込んだ部分をわかってもらえるように、必ず声がけをするようになりました。
――仕事をしていて良かったことは?
佐藤:会社の先輩もお客さんも体育会系というか、すごくノリが良くて、真面目な話の中でもちょっとしたジョークを交えてきたりして面白いですし、スタジオを担当している事で、いろんな会社の人たちと仲良くなれる事が楽しいです。
――一番印象に残っている現場はどこですか?
佐藤:大阪であった、Orange Rangeさんのライブ・レコーディングですね。初めての遠方の会場での仕事でした。ライブ自体はつつがなく終わって、そのあと打ち上げでも盛り上がれて楽しかったです。
――とても楽しめたようですね(笑)。
佐藤:もうひとつあって……北海道で玉置浩二さんのライブ・レコーディングをしたんですが、その話が、本番2日前に飛び込んできまして(笑)。打ち合わせもろくにできないまま、現地入りして、そこで話し合いつつやっていくっていう、けっこうハードでしたが、印象には残っています。
――それは、大変でしたね(笑)。いきなり決まるだとか、遠い現場での仕事は多いんですか?
佐藤:遠い現場の仕事は、イレギュラーなのであまりないんですが、1週間前に突然、話が飛び込んでくるなんてことはザラにありますね。いろいろ確認することもあるので、そういう時は決まって残業、みたいな(笑)。
――ちなみに何年くらいで現場に慣れるものなのですか?
佐藤:私は、お客さんへの接待業務がメインの仕事なので、はっきりとはわかりませんが、たぶん4年くらいで現場にはなれるんじゃないかと……。私自身は、現場に行く回数が少ないので、今だに緊張しますけど(笑)
――やはり現場とスタジオは全然違うんですね。
佐藤:そうですね。雰囲気が全然違います。スタジオはまったりしてるというか、テキパキしつつもリハーサルなので、和気あいあいな感じです。現場は、空気がピリッとしていますね。失敗できないので、とても気合を入れていますね。
――会社の雰囲気はどうですか?
佐藤:弊社はけっこうフランクな感じで、私みたいに若い人たちでも、ベテランの方にラフに絡んでいけるほど、和気あいあいとしていますし、ちゃんと話し合えますね。あとは飲み会で、みんなで馬鹿騒ぎしたり(笑) とにかく社員同士の仲がいいですね。

サウンドクルーに入ったんだねとか、声をかけてくれて。そういう時に、学生時代にライブ研修頑張っていて良かったなと思いますね。

――ESPミュージカルアカデミーの学生の頃について教えてください。
佐藤:ひたすら先生にしごかれていました(笑)。
――(笑)授業ではどんなことをしていましたか?
佐藤:週に2日PA実習があって、12号館とか本館(学校の校舎の名前)にドラム・セットが組んであったので、マイクを立てて仕込みをして、他の人がドラムを叩いている間に、サウンド・チェックの練習とか、声のチューニングの仕方とか。あとは、Pro Toolsの練習もあったので、実際に自分で音源を持ち込んで、それを例えばCMの尺まで切り貼りして縮めたりしていました。
――学生時代で楽しかったことは何ですか?
佐藤:同級生とわいわい騒ぐのも楽しかったですけど、ライブ実習で自分たちの企画したライブに向けてひとつずつ準備していく過程も楽しかったですね。ライブが終わった時の安心感と達成感も良かったです。それと、いろんなライブの研修にも参加したことですね。実際にプロの現場の雰囲気が知れて、とても勉強になりました。
――サマー・ソニックにも参加したんですか?
佐藤:行きましたね。サマソニとフジ・ロックは2年連続参加していました。
――現場では、学校で習っていたことを活かして動くことができましたか?
佐藤:サマソニのような大規模なフェスになると、ちょっと知識があるアルバイトみたいな感じというか……。1年生の時はトラック・ステージに配属されていたので、けっこう本格的に仕込みができたんですけど、2年生の時はメイン・ステージの配属になったので、音響さんの後ろについて支持通りに、言われたことだけを頑張ってやっていましたね。
――ESPミュージカルアカデミーに入学して良かったことは何ですか?
佐藤:ライブ研修がたくさんあることですね。ESPを選んだ一番の理由が、ライブ研修が他の専門学校よりたくさんあることだったので。
――確かに、ライブ研修の多さは他校を圧倒していますね。希望すれば、いくらでも行けるというか(笑)。
佐藤:そうですね。ライブ研修でフジ・ロックに参加した時にお世話になった人がスタジオに来てくれたんですけど、サウンドクルーに入ったんだねとか、声をかけてくれて。そういう時に、学生時代にライブ研修頑張っていて良かったなと思いますね。
――ESPミュージカルアカデミーと比較した学校はありますか?
佐藤:はい。そこは家から近かったということもあって、惹かれてはいたんですが、ライブ研修が極端に少なくて……。フジ・ロックの研修もあるにはあったのですが、物販のお手伝いのような、あまり現場と関われないようなものだったので、それはちょっと違うなと。
――入学する前に不安はありましたか?
佐藤:特にはなかったですね。なるようになるかって思っていたので(笑)。
――学生時代で、一番印象に残っている現場はありますか?
佐藤:やはり、一番はフジ・ロックですかね。2年間参加して、どちらもレッド・マーキー・ステージに配属されたんですが、そこのローディさんたちがすごく良くしてくれて。学生みんなに細かく声をかけてくださって、そこから仲良くなっていったので、楽しかったですね。
――就職活動について、詳しく教えてください。
佐藤:私、ここに入ったのが6月で、少し遅れていたんですね。だいたいの人たちは2年の夏が終わった頃に始めると思うんですけど、私はスタートがかなり遅くて、年明けになってから焦りだして(笑)。焦ってはいるけど、イベント科(現コンサートスタッフ科)最後の企画ライブのチーフになっちゃったので、それの準備もしなきゃいけなくて。
――タイミング悪く忙しくなってしまった感じですか?
佐藤:そうですね。全然就活に手をつけられなくて、卒業する前にもいくつか履歴書を送っていたんですけど、結果はあんまり良くなくて。卒業した後に、たまたまここの求人を見かけて、応募したら採用してもらえたっていう感じですね。

今でも仕事が立て込んでくると、焦ってしまうことがあるので、そこをクールにビシっと決めたいなと。もうなんでもこいやって感じで(笑)。

――休みはどのくらいありますか?
佐藤:不定休なのですが、月に8日間で固定されています。
――休みの日は何をしていることが多いですか?
佐藤:本を読んだりゲームをすることですかね。あとは姪っ子がいるので、一緒に出かけたりもします。たまに一日中ゴロゴロする、なんてことも(笑)。
――本を読むということですが、お薦めの本はありますか?
佐藤:ファンタジー系なのですが、『レイン』が面白かったです。その作品を書いている、吉野匠さんがもともと好きで、その方の本は揃えていますね。
――いったん読み始めると、没頭するタイプですか?
佐藤:そうですね。この一冊を読みきるまで、ほかのことはしない! なんてこともあるのですが、途中で身体痛いってなって、体勢を動かしつつ(笑)。
――佐藤さん自身も、楽器を弾くことはあるのですか?
佐藤:ベースは弾けますね。高校生の時に、軽音楽部に入ってからやり始めました。もともとはギターをやりたかったのですが、最初に組んだバンドで、ベースとドラムのメンバーがやめてしまって……。
――それは大変でしたね。
佐藤:そこからどうしようってなった時に、3ピースで頑張ろうと決めたわけです。そして担当を振り分けた時に、ベースになったのがきっかけですかね。やってみてわかったことですが、けっこう性に合っていたみたいです。
――今でも弾いているのですか?
佐藤:最近は、ちょっと疎遠気味ですね。時間があれば、また弾きたいなと思っています。
――好きなアーティストについて教えてください。
佐藤:最近は広く浅く聴くようになっていますが、高校生の時はSIDがとても好きでした。ライブには友達と一緒に、毎回参加していましたね。
――もし、SIDの担当になれるなら、なってみたいですか?
佐藤:なりたいですね! すごくテンション上がると思います(笑)。
――他にも、担当したいアーティストはいますか?
佐藤:社内のスタジオに、Orange Rangeさんが来るのですが、仕事を通じて仲良くなっていったのもあるので、担当してみたいなという気持ちはありますね。さすがに、他のアーティストを受け持っているので難しいですが、いつかは……と(笑)。
――将来やってみたいことはありますか?
佐藤:今は、目の前のことをひとつひとつやっていくことで精一杯なので、あまり先のことは考えていないです。
――ひとつの可能性として、ベーシストになりたいとは思いますか?
佐藤:もともと高校時代、スタッフとミュージシャンのどちらになろうか迷っていた時期があって。その時に、ミュージシャンだと将来どうなるかわからないから、スタッフ系の進路を選びました。堅実にいこうかなと(笑)。この先も、趣味で昔のバンド・メンバーと演奏することはあると思いますが、本格的にベースでやっていこうという気持ちは、今はないですね。
――仕事する上で、心がけていることはありますか?
佐藤:接客業でもあるので、愛想を良くすることですかね。あとは、スタジオが常にきれいであるように気を配るとか、後輩が気持ちよく仕事できるようにとか、いろいろ考えています。
――後輩に何か教えたりすることもあるのですか?
佐藤:社内的な処理を教えることや、たまにスタジオPAの発注が来るので、そこで現場の様子を見せるなどをしています。
――仕事に対する意気込みについて教えてください。
佐藤:今でも仕事が立て込んでくると、焦ってしまうことがあるので、そこをクールにビシっと決めたいなと。もうなんでもこいやって感じで(笑)。あとは、現場に顔出しした時に、いろんな人たちと仲良くなって、新しい仕事の話をもらえるようになりたいなと思っています。
――ESPミュージカルアカデミーの卒業生として、この仕事を目指している人に対するメッセージなどあればお願いします。
佐藤:とにかく飛びこんで、ガツガツと先輩に食らいついていきましょう。私も、スタジオ部の面接を担当しているのですが、食らいついてくる人には、いい印象を持ちます。この子はやる気があるな、と。緊張するのもわかりますが、そこで萎縮しすぎちゃうと、その人の個性が見えてこないです。現場においても、緊張の度合いは一緒だと思うので。あとは、些細なことでいいから、どんどん質問する。世間話でもかまわないので、自分をアピールしていったほうがいいと思います。

佐藤さんがいつも持ち歩いてる道具

  • ・MacBook
  • ・テスター
  • ・ペンチ
  • ・はんだごて
  • ・はんだ
  • ・ノート
  • ・ドライバーセット

企画、インタビュー&コーディング:ESPミュージカルアカデミー Webクリエイター科学生

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